2006.12.19

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Winny判決要旨を読む

Winny判決についてのまとめとエンジニアの今後 | 京の路」の続きを。

このエントリーでは、「ウィニー」裁判、判決要旨 - asahi.comを読んでいきたい。

まず判決要旨は大きく分けて3つの部分で構成される。

  • 被告の行為と認識
  • 幇助の成否
  • 量刑の理由

「被告の行為と認識」では、行為自体は有罪とは言い切れず、この場合の判断基準は被告の認識に重きが置かれるということを宣言している。そして次で簡単に幇助の成立理由について述べ、最後に具体的な判決内容(罰金150万円)の理由について述べている。

まず、被告の行為(Winnyの開発)については、

技術自体は価値中立的であり、価値中立的な技術を提供することが犯罪行為となりかねないような、無限定な幇助(ほうじょ)犯の成立範囲の拡大も妥当でない。

とあり、Winny開発そのものの害悪は一切認められていない。(むしろ奨励された感すらある)よってこの判例はエンジニアの「グレーな(?)」新技術開発について、後押しこそすれど妨げるものでは一切無い。

が、認識については、

結局、外部への提供行為自体が幇助行為として違法性を有するかどうかは、その技術の社会における現実の利用状況やそれに対する認識、提供する際の主観的態様によると解するべきである。

とした上で、

被告の捜査段階における供述や姉とのメールの内容、匿名のサイトでウィニーを公開していたことからすれば、違法なファイルのやりとりをしないような注意書きを付記していたことなどを考慮しても、被告は、ウィニーが一般の人に広がることを重視し、著作権を侵害する態様で広く利用されている現状を十分認識しながら認容した。
そうした利用が広がることで既存とは異なるビジネスモデルが生まれることも期待し、ウィニーを開発、公開しており、公然と行えることでもないとの意識も有していた。

としている。ここまでを判例として捉えると、「悪いことに使われるということが分かって何かを作ることは、それによって正犯者が発生した場合には、被告の認識いかんによっては幇助罪になりうる」ということを意味する。「包丁を作ったら捕まる」というのとは違うが、「Aさんを殺そうとしているBさんに、包丁を作って与える」となると有罪だ。なんとも「まともな」判断ではないか。

幇助の成立理由については、

ウィニーが著作権侵害をしても安全なソフトとして取りざたされ、広く利用されていたという現実の利用状況の下、被告は、新しいビジネスモデルが生まれることも期待し、ウィニーが上記のような態様で利用されることを認容しながら、ウィニーの最新版をホームページに公開して不特定多数の者が入手できるようにしたと認められる。
(中略)
被告がソフトを公開して不特定多数の者が入手できるよう提供した行為は幇助犯を構成すると評価できる。

とあるが、この部分は「どの程度悪を認識していたら有罪なのか」という閾値が問題になるだろう。個人的な感想としては、この判決の閾値は低すぎると思う。新しいサービスというのは何かしら「破壊的な」面を持つのが常だが、この判決ではその対象が法律であった場合、ユーザの行動次第で有罪とされる可能性がある。そのため、僕は「直接掲示板などでユーザを煽っていた」などの理由が無い場合は、有罪にはできないのではないかと思う。この部分については今後高裁で争われるのではないだろうか。

最後に量刑の理由についてだが、ここでは引用しないが、「初犯だし、何か個人的な利益を狙ったものでも無いので、軽くしときましょう」という感じ。

ただ、

もっとも被告はウィニーの公開、提供を行う際に、ネット上における著作物のやりとりに関して、著作権侵害の状態をことさら生じさせることを企図していたわけではない。著作権制度が維持されるためにはネット上における新たなビジネスモデルを構築する必要性、可能性があることを技術者の立場として視野に入れながら、自己のプログラマーとしての新しい技術の開発という目的も持ちつつ、ウィニーの開発、公開を行っていたという側面もある。

とあり、この点では被告が悪意を持っていた訳ではないことを認めている。それでも幇助罪に問われてしまうというのが、なんとも微妙だ。。

まぁただ、まだ詰め切れていないとうのが実際のところだろう。